童話 グルニャンの贈り物
先週から、立て続けに、愛ネコを亡くしました。 一緒にコリマへ行こうぜ、フニャ~ン...、なんて言い合ってたのに。 僕たち家族の不運を、一手に背負って死んでくれたような気がしてます。
回想録は、休ませていただいて、今回は哀悼の気持ちを込めて書いた童話です。
それでは、グルニャンの贈り物。
グルニャンの贈り物
イルダの可愛い茶トラネコ、グルニャンが死んでしまいました。
朝、学校に行くときには、るるる、と喉を鳴らして見送ってくれたのに。
お昼に、おうちに戻ると、お母さんに呼ばれました。
イルダ、とても悲しい知らせなの。 グルニャンが死んじゃったのよ。
お母さんは、イルダの肩を抱くと、裏庭に連れて行きました。
グルニャンは、いつもお昼寝をしていた、物干し台のタオルの上に、体をまっすぐに伸ばして、横たわっていました。
イルダは、グルニャンを抱き上げました。
グルニャンの体は冷たくて、うっすら開けた目は、ガラス玉のようでした。
グルニャン...。
涙が頬を伝って、ぽたぽたと、グルニャンの顔に落ちました。
お母さんがさっき、洗濯物を持って来たら、グルニャンがぶるぶる震えて、苦しんでいたの。 すぐに、動かなくなってしまった。 グルニャン、すっと木戸のほうを見ていたわ。 イルダが来るのを待ってたんだと思うの。
お母さんは、イルダの腕から、そっとグルニャンを抱き取ると、ライムの木の下に掘ってあった穴に、横たえました。
さよなら、グルニャン...。
グルニャンの体が、土に隠れた時、グルニャンとは永久にお別れなのが、はっきりと分かりました。
グルニャン...、グルニャン...。
イルダは、お母さんに抱きついて、わあわあ泣きました。
イルダは、その日の夕方、一人で浜に行きました。
誰にも会いたくありませんでしたから。
波が寄せる砂浜を、グルニャンのことを考えながら歩きました。
潮風が、ぶうぶう耳を鳴らして、吹いていきます。
イルダは、グルニャンが喉を鳴らすのを聞いたような気がして、顔を上げました。
濡れた砂の上に、貝殻があります。
今までに見たことのない、大きな巻貝です。
貝殻は、夕日に透けて、きらきら輝いています。 茶色の縞模様が、グルニャンそっくりです。
グルニャン...?
お空には、ちぎれ雲が、夕日に染まって駆けています。
お空のどこかから、グルニャンが喉を鳴らして、イルダを見ているような気がします。
この貝殻は、グルニャンからの贈り物なのだわ。
イルダは貝殻を手にとって、そっと唇を押し当てました。
それは、イルダが大好きだった、グルニャンの桃色のお鼻のように、ひんやりと冷たく、少ししょっぱかったのであります。
...お終い...
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