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2015年11月20日 (金)

新しい星屑

Img_0358_convert_20151120082657愛ネコ、ミケサマが死んだ。

春からずっと下痢気味で体調が悪かったのだが、日曜日に僕が出張から戻った時には、危篤状態になっていた。 僕が家を出た夜から、ずっと僕のデスクの下に横たわったままだったそうだ。

僕の足音を聞きつけて、ミケサマは顔を上げ、緑色の目を細めて僕を見る。 ほんの5日間留守にしただけなのに、ほとんど骨と皮だけに痩せていた。

翌日も、その翌日も、ミケサマはPCに向かう僕の足元にずっと横たわったいた。 家内の言うには、僕が野良仕事に出ると、居なくなるそうだ。 あんなに弱った体でどこに行くんだろうか。 僕が家に戻ると、ミケサマはもうデスクの下にいる。

そして昨日、僕が暗くなってから戻ると、家内が部屋を掃除していた。 ミケサマがいない。

ミケサマは? 掃除を始めたら、出て行ったわよ。 家内は、トイレに行けなくなったミケサマが部屋を汚すのを嫌がっていた。 家内の気持ちを察して出て行ったか? あるいは、追いだしたのかもしれない。

どっちへ行った? 知らないわ。 家内は素っ気なく答えた。

僕は、裏戸を押してテラスに出た。 月明りに光る床に、ミケサマはいた。 僕を見ると、ここもダメなのか、と立ち上がり、歩み去ろうとする。

違う違う! 君に会いに来たんだ...。 ミケサマは振り向いて僕を見つめる。 やがて、僕の足元に丸くなった。 僕は喉を撫で、体をさすってやる。

ミケサマの体は、もう冷たくなり始めていた。 ミケサマはまっすぐに僕を見ている。 その目に不思議な力が宿り、明るく強く輝いているのを僕は見た。 焦点はぴたりと僕に合っているのだけれど、他の何かを見ているようでもあった。 ミケサマには、これから行く世界が、はっきりと見えているようだった。

僕はずっとこうしていたかったのだけれど、やがてミケサマは僕から視線を外すと、前足の間に頭を落とし、静かに目を閉じた。

さよなら、ミケサマ。 ...ええ、さよなら...。

僕はミケサマの体を横たえると、真っ暗な庭に出た。 西空に黄色い半月。 せわしく瞬きながら昇り来る冬の星座たち。 夜空全体が楽を奏でているようだ。

...あの高く歌うオリオンの、少し夜露で滲んだ剣のあたりに、もうすぐ新しい、青い小さな星屑が生まれる...。

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コメント

ここに引っ越しする一年ぐらい前にトラ猫が亡くなりました。10年一緒だったのでもう毎日思い出しては涙が出ました。子供の頃実家で長生きした猫がミケ猫でミケと呼んでいました。
暫く思い出してしまいますね。
猫は案外頭が良くて自分を好きな人が分かるんですね。

投稿: サニー | 2015年11月21日 (土) 00時42分

>サニーさん
一緒に暮らした生き物との別れは本当につらいです。 でも、ネコにはネコの逝き方があると。 ミケサマ、潔く一人で旅立ちました。 僕はここ20年近く、ずっとたくさんのネコたちといまして、看取った子たちも行方不明になった子たちも、全員よく憶えています。 

投稿: OTTO | 2015年11月23日 (月) 02時20分

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