テアカパンの魚達

2010年5月13日 (木)

テアカパンの魚達ーXIIII パンパニト

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100_0717_convert_20090913123605_con

外洋の砂浜で投網を打つ。

条件が悪い。 遠浅の浜で引き潮だ。 白波は威勢良くで砕けるが、どこまでいってもせいぜい膝上10cmの深さ。  おまけに真昼間だ。       

波しぶきの中で、もう小一時間になる。 何も入らない。 

やっぱりダメか...。 諦めて波に背を向ける。 

やけくそで砂浜に向けて最後の一投、きれいなループを描いて落ちる。 だけどそこは水深30cmだ。

まあ投網の皺伸ばしだな...、自嘲しながら網を手繰り始める。 その時いきなりビクリと腕が引かれ、思いがけなく、きらめく銀鱗が目に飛び込んできた。

現地名パンパニト(PAMPANITO)。 英名Gafftopsail Pompano、たぶんTrachinotus rhodopusだろう。  最大60cmまで大きくなるという。  日本の暖かい地方にいる、コバンアジやマルコバンと近縁の魚だ。 

僕がテアカパンで見たのは小さいのばかりだ。 20cmぐらいの幼魚が外洋の砂浜の、ほんの波打ち際にいる。 大きくなると沖合いに去るのだろうか? 

幼魚は投網漁の獲物だ。 細仕掛けで狙えば釣れるのではないかと思うが、まだトライしていない。 小さくても、ぷりぷりした身が美味しい。 だけど、たまにしか獲れない魚だ。

輝く銀色の、菱形の扁平な魚体。 薄い6本のグレイの縞がある。 見事なヒレは控えめなオレンジ色。 おもわず見とれてしまう、きれいな魚だ。

この魚を網から外していると、カナダ人の老夫婦が歩み寄ってきた。 ご婦人が、なんて美しいお魚!、と歓声をあげる。 

なんていう名前の魚ですか? ...ええ~っと、これはですね...、説明しかけた時、旦那さんが叫んだ。 エンジェルフイッシュ! 

僕は無粋な説明をやめた。 

あはは...、エンジェルフイッシュ、ほんとにそうね...。 小さな子供のようにキャアキャアはしゃぐお2人と一緒に、僕も笑いだす。 ...パンパニトは、本当に天使のような、みんなを幸せにしてくれる綺麗なお魚ですね...。

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2010年5月 3日 (月)

テアカパンの魚達ーXIII ベルガト

100_7352_convert_20100428123242 たぶん、Menticirrhus undulatus。 英名カリフォルニアキングクローカー(CALIFORNIA KING CROAKER)。 ニベやイシモチの近縁種だ。 テアカパンではベルガト(BERRUGATO)と呼ばれている。 

ご覧のように、小さなあご髭がある。 口は下側にあって、上唇が覆いかぶさっている。 この口はスポイドのように伸ばすことが出来る。 

英名でキングと言うだけに、結構大きくなる魚だ。 とはいっても多いのは30~40cm、せいぜい60cmぐらいまでだ。 

外洋に面した砂浜の、ほんの波打ち際にいる。 特徴的な口を伸ばして、波が巻き上げる底性生物を漁っているのだろう。 浜のいちばん近くに崩れる波の上に投網を打つと、よく掛かって来る。 まれに北米から来た釣り人が、小さな針にスナモグリガニを付けて、浜からの投げ釣りで釣っている。 

見栄えはしない魚だが、なかなか美味しい。 綺麗な白身で、卸してフライにすると、メルルーサのような食感で旨みも十分あり絶品だ。 

しかしながら魚屋に並ぶことはないし、漁師達や釣果重視の地元の釣り人が相手にする魚でもない。 それはおそらくこの魚が群れを作らず、外洋の岸に点々といるので、多獲できないからだろうと思う。  

僕は、荒波寄せる外洋の砂浜で、一人で黙々と投網を打つのが好きだ。 普通、獲物はボラ。 ボラがいないときには、このベルガトが狙いになる。

荒涼たる浜で投網を打っていると、遠くにぽつんと人影が見える。 若い白人の釣り人だ。 向こうも黙々と竿を振っている。 歩み寄って訊けば、全身から波しぶきを滴らせながら見せてくれた獲物はベルガトが3尾...、僕のバケツの中も同じだ。 お互いに破顔一笑、グッドラックと手を振って左右に別れ、また二人とも黙々と漁を続ける...、 こんなのは輝くばかりに素敵な時間だ。 ベルガトは間違いなく、遊漁者達の魚だ。

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2010年5月 1日 (土)

テアカパンの魚達ーXII ティラピア

100_7329_convert_20100425114717 テアカパン郊外の溜め池で獲ったティラピア。 30cmを超える立派な魚だ。   

アフリカ原産、養殖目的で持ち込まれた移入魚。 養殖されているティラピアの仲間は数種あるらしい。 いずれも淡水魚だが、海水以上の濃度の塩水にも耐えるという。 写真の魚は、何と言う種類のティラピアだろうか? 

メキシコでは20年以上前から、盛んに養殖が行われている。 そうなると必然の結果として、自然界に逃げ出す。 メキシコの場合は人為的に放たれたのが多いだろう。 繁殖力の強い外来魚が好適な環境を得たわけだ。 いたるところで繁殖している。

けっしてきれいとは言えない溜まり水の魚なのに、見事な白身をしている。 不思議と泥臭さも無い。 海魚が豊富なテアカパンでは好まれないが、特に海から遠い地方では、タイ型の食用魚の総称であるモハラの名を冠され、安価で美味しい食用魚として親しまれている。  

一般には、藻や有機泥を食べると言われている。 だけど実際は魚や甲殻類も貪食する。 それは水槽で飼ってみればわかる。 もちろん水草や藻も食べるが、同時に同居している小魚やエビも食べ尽くしてしまう。

そしてその成長の早さ。 それから初夏の乾季に、お風呂のような高温の泥沼で平然と生き抜くタフさ。 化け物のような魚だ。 

テアカパンでも、たいていの溜め池にいる。 すでに、もっとも普通に見られる淡水魚になった。 最近は数は多くないが、汽水であるマングローブ域でも見かけるようになっている。 

気懸かりなのは、マングローブ域の水路に生簀を作っての養殖事業まで、あちこちで始まっていることだ。 

大丈夫だろうか? 在来魚を駆逐してしまわないだろうか? マングローブ域は多くの海産魚の稚魚が育つ聖地、大切なサンクチュアリーなのに。 

だが心配しても、どうしようもない。 もう賽はとっくに投げられてしまっているのだから。

マングローブ域の生態系が健全であるかぎり、大丈夫だとは思う、そう信じたい。 びくびくしながら見守るしかない。

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2010年4月26日 (月)

テアカパンの魚達ーXI パルゴ

100_7274_convert_20100422094028_2 パルゴ(PARGO)の仲間は結構いるが、テアカパンで単にパルゴと言えばこの魚だ。 Lutjanus novemfasciatus、英名ドッグスナッパー(DOG SNAPPER)。 日本のフエダイやタマミに近縁の魚だ。

この仲間は、世界中の暖かい海に広く分布している。 沖縄あたりにはいろんな種類がいて、重要な食用魚とのことだ。   

テアカパンにいる5種ほどのパルゴ類の中でいちばん大きくなる種類。 上の写真の魚は先週釣った。 62cm、3.4kg。 薄暮時、テアカパン村の前の浜の、岸からほんの数メートル、水深2mほどのところで、生きたボラの餌にヒットした。  

テアカパンの海の王者。 湾内やマングローブ域など、隠れ場所があるところを好むが、まあどこにでもいる。 汽水にもいる。 2~3kgが良く見られるサイズだが、漁師達は10kgぐらいの魚を普通に獲ってくる。 ひと昔前には30kg、1mをはるかに超える怪物も珍しくなかったと言う。

P1010044_convert_20100424055117幼魚は、体形がややスマートで、茶色っぽくて縞模様が目立つ。 左の魚は41cm、1.3kgだが幼魚の姿を残している。 だいたい40cmを超えるぐらいから成魚の体色である、朱色に変わるようだ。 ただし体色の個体差は大きい。 成魚でも褐色が強いのもいる。  

美味しい魚だ。 テアカパンでは最も好まれる魚。 特に漁師達は、魚と言えばまずパルゴ、人を招く時にはパルゴ以外は出さないと言う人もいる。 味だけでなく、好敵手としての崇拝の念からだろう。

それは実際にパルゴを相手にしてみればわかる。 豪放磊落と言うのだろうか。 まず、大ぶりのルアーか、生きた餌でないと釣れない。 手っ取り早く勝負を挑もうと思うなら、大針に魚や大エビを弱らせないように付けて、いそうな場所に送り込んでやると良い。 生きの良い大餌、気を使うのはそれだけだ。 糸が太かろうが、錘がダンベルのように重かろうが、気が向けば全く意に介せず喰いついて来る。 朝夕など、岸からほんの目の前の所に10kgクラスの魚が徘徊していることもあるのだ。

そしてその、とんでもない怪力ぶり。 ぼくは50ポンドのラインを使う。 これは鮫だって取れる太さだ。 それを見て、カナダからの避寒客アングラー達が、鯨を釣るのかい、と笑う。 彼らは華奢なルアーロッドに15ポンドのラインだ。 これで十分、腕次第で20キロのキングサーモンだってランディングできるんだよ、と自信たっぷりだ。 

だけどもパルゴはそんな柔な魚じゃない。 そんな仕掛けじゃあ、まともなサイズのパルゴはまず取れない。 竿でためようとすれば、のされて切られる。 糸を送り込んだら根に入られる。 5キロを超える大物だと、一直線に糸が出切るまで走られてプッツンだ。 やり取りもさせてもらえない。 手荒い洗礼を受けて、怖いものを見た顔で、肩を落として戻ってくることになる。

パルゴの大物を釣るには、綱引き状態になっても切られない太さの糸を使い、掛かったら力任せに引き上げるしかない。 潜り込まれそうな障害物が近くにあるところでは釣らないこと。 引っ張られて足を滑らせ海に転落なんてならないように、足場の良い釣り場所を選ぶことも大事だ。 竿を介しての綱引きならば、下手をすると相手のほうが強いのだから。

さて、こんな怪魚パルゴだが、最近は目立って減ってきている。 十年も前なら、潮時を選び、良い餌を使い、それでも釣れなければ、運が悪かったと言えた。 最近は、準備万端で挑んで、もし釣れればラッキーという状態だ。 漁師でさえ、小舟を駆って、湾のかなり奥まった所まで行くようになっている。 何故だろう。 マングローブ域が減ったせいだろうか? それとも寄って集って捕るからだろうか? いずれにせよ、生態系の頂点に立つ長寿な魚なので、一度減ると回復するのは難しいかもしれない。

だがパルゴという魚、漁師や釣り人に追い掛け回されようが、警戒心を持つようなことはないようだ。 相変わらず、ほんの岸辺で、太い仕掛けに喰いついて来る...いればの話だが。 そういうところが可愛くもあり、心配でもある。 どうかいつまでも南海の王者として君臨してもらいたいものだ。 

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2010年2月27日 (土)

テアカパンの魚達ーX ヒメジの一種

100_5868_convert_20100225140017 ほとんど暗くなる頃に投網を打っていたらこんな綺麗な魚が掛かってきました。

ヒメジ、英名ゴートフイッシュ(GOAT FISH)の仲間です。 長いあごひげがあります。 ご覧のようにナマズなみの立派な髭です。 2本だけだけど。

この髭は感覚が発達していて、これでガサゴソ食べ物を見つけるらしい。 両エラの合わさるところに溝状の窪みがあって、お髭がピタッと収まるようになっていました。 

ヒメジの仲間は世界中の温帯から熱帯の浅海に広く分布しています。 多くは小魚ですが、赤や黄色や紫やいろんな色のがいて、観賞用として人気があるようです。 水族館にも必ずいます。 

テアカパンでは漁師は全くの雑魚扱い、全く利用されずに捨てられてます。 誰も食べてないようです。 何度か20cmぐらいの新鮮なのが捨てられるのを見て、持ち帰って食べましたがなかなか美味しいです。 ほど良く締まった白身で、から揚げや味噌汁に最適です。 こういう他人の知らない美味しい小魚を、他にはカナドとかヤガラなんかですけど、こっそり食べるのは楽しいものです。 だけど残念ながらいずれもそうそう頻繁に見かける魚ではありません。

まあ実際、どれぐらい獲れて捨てられているのかは、漁師になってみないと分からない。 漁師はいらない魚は陸には持って来ません、漁場でポイ、ペリカンの餌です。 僕の手に入る雑魚は、偶然に網に引っ掛かって残ってたとか、船底に落ちてたとか、そういう魚ですから。  

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この子は小さいし、あんまり綺麗だったので、持って帰って水槽に入れました。 ご機嫌に泳ぎ回っています。

体色は微妙に変化するようです。 ちょっと白っぽくなり、赤い模様が目立たなくなりました。 周りの物の色に合わせるのか? 光の強さにも関係がありそうです。 夜は赤くなるとか? あるいは赤い模様は興奮色? 

エビの身をやったらすぐに食べます。 ストレスのかからない飼い易い魚のようです。 人にも良く慣れそう。 

数日飼ってじっくり観察したら、逃がしてやるつもりです。 なつかれると困るけどね。

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2010年1月29日 (金)

テアカパンの魚達ーIX サヨリの一種

100_1770_convert_20100116054942 英名HALFBEAK。 

テアカパンではパハリト(PAJARITO)と呼ばれている。 小鳥という意味。 長く伸びた下唇をクチバシに見立てての名前だろうか。 あるいは漁獲するとき、追い詰められたこの魚がピョンピョンと水面から飛ぶからかもしれない。

テアカパンでは年中見られる。 夏に多いが、冬でも獲れ、抱卵しているものもある。  

湾内の水面近くに群れを作って泳いでいる。 海藻が主食のようだ。 腹を割くと黒っぽい海藻がどっさり出てくる。

サヨリの仲間は、暖海に広く分布していて、良く似たのが色々いるようだ。 テアカパンにいるのは、この写真の一種類だけのように見えるが、自信は無い。    

漁師は遠くから群れを見つけて、巻き網で囲って獲る。 紅を引いた様なくちばしの先が、水面から出ているのを見るのだと言う。 本当にあんな微細なクチバシが、波間に見えるのだろうか? 僕には到底出来ない技、ちょっと信じられない。

クチバシまで入れて30cmまでの小さな魚だ。 テアカパンでは、普通はこんな小さな魚は相手にしないのだが、サヨリは魚屋に並んでいる。 それだけ美味しいということだろう。 から揚げにしたり焼いたりする。

もう15年近くも前、ソノラ州の国境地帯に住んでいたころ、年末には約1700kmもドライブして、テアカパンで休暇を過ごしていた。 あの頃のテアカパンは、取り残されたような漁村だった。 村の前は石ころだらけの浜で、小さな木造の桟橋が一つあるだけだった。 僕が小さな竿にリールをセットしていると、村人が集まってきた。 竿で釣りをするのが珍しいというか、たぶん見たことが無かったのだと思う。 

小エビの餌で、フエダイやヒラアジの幼魚が入れ食いで釣れた。 ふと見ると水面をサヨリが泳いでいる。 川釣り用の細仕掛けに変え、一番小さな針にエビの腹足をつけて、重り無しのウキ釣りにしてみた。 狙い通りにサヨリが掛る。 見物人の群れから感嘆のざわめきが起きた。 サヨリを釣り針で釣るのは考えられないことだったようだ。

ポツポツとだがサヨリが釣れる。 5匹ばかり釣った頃だ。 おじさんが一人、投網を下げて近づいてきた。 投網を腕に掛けると、僕をちょっと見て笑って、そして投網を打った。 僕に釣っているすぐ横だ。 何と言うマナー知らずの奴だ。 僕は怒りを通り越して唖然とした。 

おじさんは慎重に投網を手繰る。 30あまりのサヨリが掛かっている。 そりゃそうだ、こっちが寄せてるんだから。 言ってみれば僕の魚じゃないか。 

ところがだ、おじさんは悠々と近寄ってくると、憮然とした僕のまん前に、投網から獲物をふるい落とした。 そして僕を見て笑って離れていった。 

事態を理解するのに相当な時間を要したが、つまりおじさんは、僕の漁の効率の悪さを哀れんで、獲ってくれたということらしい。 楽しみに魚を釣っているということが分かっていないのだ。 

一家の夕食には十分すぎる漁獲だった。 僕はピチピチ跳ねるサヨリをかき集めると、早々に釣竿をたたんで宿に引き上げ、40匹近くのサヨリを捌き、刺身にした。 とても美味しかったのだが、僕の不機嫌はなかなかなおらなかった。 僕はあの午後の桟橋で、細波に目を細めながら、日暮れまで釣り糸を垂れていたかったのだから。

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2010年1月16日 (土)

テアカパンの魚達 VIII ロバロ

100_3902a_convert_20091205124359 テアカパンではスヌーク(SNOOK)の仲間の大型種を、ロバロ(ROBALO)と総称しているようだ。

スヌークはアカメ科のホソアカメ属の魚だ。 日本にはスヌークの仲間はいない。 アメリカ大陸沿岸のみに12種、そのうち太平洋岸にいるのは6種類とされている。

テアカパンで漁師達がロバロと呼んでいる魚はブラックスヌークとホワイトスヌークだろうか。 いずれも1m以上になる、獰猛なフイッシュイーターだ。 

大型種のスヌークはポーツフイッシングの対象魚としてテレビやゲームに良く出てくる。 写真の魚は約35cm、ほんの幼魚だ。    

ロバロは湾内のマングローブ域に多いが、外洋の浜にもいる。 波打ち際に膝まで立ち込んで打った投網に、75cm、3kgもあるロバロが入ったことがあった。 

メキシコではロバロは高級魚。 スズキに似た綺麗な白身の魚で、大きいのは良い値段で売れる。 漁師達は、マングローブの枝を切って束ねたのを、湾内の気に入った場所に沈める。 そうするとロバロが住み着くようになる。 2~3mの浅い場所だ。 素潜りで水中銃で射て漁獲する。 

または夜、入り組んだマングローブの水路に分け入り、ランプを点すとロバロが寄ってくるという。 これをモリで突いてとる。 ついでにワニまで捕って来る猛者もいる。

10年も前には、1m以上10キロオーバーの魚が毎日のように獲れたという。 今はそんなのは稀、2~3kgのが普通だ。 

テアカパンは、スポーツフイッシングに関しては処女地だ。 少数の外国人以外には、ルアーを使う人は皆無。 減ったといっても対象魚はいる。 さぞかし釣れるだろうと思った。 しかし、ロバロに関してはあてが外れている。 

釣れない。 テレビで見る限り、じゃんじゃんアタックしてくるはずなのに。 投網で獲った数のほうがずっと多い。 魚はいるのに。 問題は何だ? やっぱり腕、それから道具だろうなぁ。 

まともなサイズを釣ったのは2回だけ、いずれも薄暮、湾の入り口の潮流の中、鯛カブラを模して作った自作の擬似餌を、超スローにボトムを引いていてヒットした。 おかしいなぁ、イメージと違うのだ。

いつの日にか、専用のタックルを持った熟練者が来たときに、朝もやの中をマングローブの迷路に繰り出し、トップウオーターでチャレンジしてみたいと思っている。 

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2009年11月25日 (水)

テアカパンの魚達 VII シイラ

100_3432a_convert_20091117033810 英名Dolphinfish。 メキシコではドラド(DORADO)。 金色という意味だ。  

シイラ獲りの船に乗ったのは、もう20年近く前になる。

漁師が無造作に投げ込んで、引っ張りまわす擬餌針に、シイラは他愛もなく喰い付いて来た。 

水しぶきが上がり、漁師は船を止め、たくましい腕で糸を手繰る。 

舷側の水面が盛り上がったかと思うと、金色の帯が魚雷のように走った。 

金色のエネルギーの塊が、暗い海面を盛り上げ、切り裂いて...、あっという間に、ギャフを打たれ、船に放り上げられた。 

手を触れたら弾き飛ばされそうな、光り輝く金色に、背びれと体側の斑紋の緑。 僕は驚きに目を見張り、息もつけなかった。 

船に上げられたシイラは、あっという間に輝きを消し、暗い緑色に沈んで行く。

擬餌針を投げるごとに、シイラは喰い付き、金色のエネルギーを発散させ、燃え尽きて、暗く沈んで、亡き骸になってゆく。 次から次へと...。 

シイラは、全世界の暖海にいるという。 海表面を高速で遊泳し、トビウオなどを貪食する。 日本では、夏の魚だ。 

テアカパンでは、4~6月と、10~12月が漁期。 だけどもたぶん、年中いるんだと思う。 他にもっと金になる漁があるときには、シイラは獲らないのだろう。 それから漁場が遠くなる時とか、ハリケーンが通る7~9月も。 パンガで1時間近く、全速で飛ばして、やっとシイラがいる海域に達するのだから。 

4月にも、12月にも、卵を持っている。 北緯21度の海域では年中、産卵期なのだろうか?

悪相な魚だ。 小さな窪んだような目が、いかにも性悪に見える。 写真の魚は、5kgの雄。 雄は大きくなるにつれて、こんな風におでこが出っ張ってくる。 10kgを超える雄など、ひどいデコッパチになる。 雌の額はたおやかだが、目つきの悪さは同じだ。

だけどもだ、あの金色のビームを浴びてしまった僕は、シイラに特別な思いがある。 それに、なかなか旨い魚なのだ。 

フライやムニエルは、料理書の定番、十分に美味しい。 大きな魚なら、刺身や寿司ネタにも上等だ。 

そして、なにより僕が好きなのは、タタキ。 エネルギーを発散しつくした、白い柔らかな魚肉に、細かく刻んだタマネギとニンニクを叩き込み、チレをちょっと効かせる。 ご飯にたっぷりと乗せて、醤油をふりかけて掻き込めば、あの金色の輝きが、僕の中でよみがえるようだ。

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2009年11月 2日 (月)

テアカパンの魚達 VI スヌークの一種 コンスタンティノ

100_2427_convert_20091030131611 現地名、コンスタンティノ(CONSTANTINO)

小西英人氏に写真を送り、見ていただいたところ、(写りも撮り方も悪くて、種の同定に必要な大事なところが良く見えない)写真ではわかり辛いが、英名アームドスヌーク(Armed snook)であろう、とのことでした。 ありがとうございました。

しかし、実物と画像を比較しての第一印象は、イエローフィンスヌークにも似ている。

とりあえずは、現地名の、コンスタンティノを使うことにします。

 スヌーク(SNOOK)の仲間は、新大陸沿岸に、12種いるという。 スズキの近縁、アカメ科の魚だ。 大型で豪放なフイッシュイーターであり、スポーツフイッシングの対象魚として知られている。

テアカパンには、スヌークの仲間は、少なくとも3種はいる。 

①地元でロバロ(ROBALO)と呼ばれる、1mにもなる大型種、②PLATEADOと呼ばれる、全身銀色に近く、鱗の大きい、やや扁平で体高のある中型種、それからこの③肉厚で鰭の黄色が目立つ、小型のコンスタンティノだ。

太平洋岸に6種いるらしいから、実際には、もっといるのかも知れないが、漁師が区別して呼んでいるのは、上記の3種である。

コンスタンティノは、この3種の中で、いちばん汽水性が強いようだ。

マングローブの入り江の、うんと奥まったところ、もう淡水と言っても良いような、開けた浅場に、この稚魚が群れを成していて、投網や刺し網で、漁獲される。 10~15cmのものがほとんどだ。 朝の魚屋に、山のように積まれて、売られている。

こんな小魚で、魚屋に並ぶのは、コンスタンティノと、サヨリだけだ。

正真正銘の、美味な魚なのである。

半キロ、1キロ、と計り売りで、おばさんたちが買っていく。 フライパンで焼いたり、素揚げにするという。

もっと大きなのは、潮通しの良い、湾の入り口の、捨石回りなんかにいるが、めったに魚屋には出ない。 それはたぶん、ロバロに比べて小さいので、漁業として成立するほどの量を漁獲するのが難しいからなのだ、と思う。 ロバロなら、2kgのを数匹獲れば、一日の稼ぎになるが、コンスタンンティノだと、30cmクラスだから、最低数十匹。 成魚は、そんなに楽に獲れる魚ではない。

ルアーやジグでは釣れたためしは無い。 だから、スポーツフイッシングの対象魚にはならないはずだ。 

はて、話が違うぞ。 魚食性ではなく、雑食性の魚なのか? 確かに、そのおちょぼ口は、他のスヌークの仲間に比べて、小さくはある。 

良形のコンスタンティノを狙うなら、ブッコミ仕掛けで、小さめの針に、エビの剥き身や小エビの餌が良い。 良い潮廻りで、運もよければ、25~30cmのが、10ぐらい釣れることがある。 

愛しい魚...、他のスヌークの仲間のように、大暴れして、ジャンプしたりはしない。 渦巻く青い潮流の中から、黄色い鰭と銀鱗をきらめかせて、慎ましやかに現れるのだ。  

これぐらいの大きさになれば、尾頭付きの塩焼きにしよう。 骨離れの良い身は、雪のように真っ白で、ふわふわ淡白で、それでいてたっぷりと旨味がある。 腹鰭や尻鰭のあたりの、皮のちょっと焦げたところなど、滋味が凝集していて、天下一品と言える。 

テアカパンでいちばん旨い魚は、と聞かれれば、僕は迷わずに、コンスタンティノと答える。 

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2009年10月24日 (土)

テアカパンの魚達 V ダツの一種 

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水面がざわついている。 

微妙な水流の乱れ。 小さな渦が現れては消える。

ナブラか?

とすれば、大物か? 水面下を悠々と回遊しながら、獲物を狙っている...。

ホッパーだ! 震える手でホッパーをつける。 胸が苦しい。 息が苦しい。

ひゅうっ。 ぱちゃっ。 よし、見事に斜め後ろに着水だ。 

ぱしゃっ...、ぱしゃっ...、 しぶきを上げて誘う。 

ダメだ。 ホッパーは怪しい水面の端を素通りしている。 

いや、追ってくるぞ。 それっ、喰いつけっ、それっ、喰いつけっ...。

ホッパーはもう足元だ。 喰いつけっ。 

緑色のロープのような魚が、ホッパーに絡み付くように、ついて来るのが見えた。

な~んだ。 ダツだったのか。 爽快感を残して、全身の力がすーっと抜けて行く。

100_2406_convert_20091008012141_2 ダツは、こんなふうに細長い魚だ。 70~80cmもある奴が、岸近くの水面にいる。 泳いでいるのを上から見ると、妖しい蛍光を放つ緑色。 釣り上げれば銀白色に青い背中。 きれいな魚だ。

ダツの仲間は、世界中の暖海に、30種あまりがいるという。 テアカパンでは、外洋沿いの沿岸に多いが、湾内にもいる。 汽水でも見かけるが、あまり深入りはしないようだ。   

長いくちばし。 ご覧のように、小さな鋭い歯が並んでいて、ワニのようだ。

肉食の魚だろう。 だけど不思議な魚だ。 何匹、腹を割いても、いつも胃袋は空っぽだ。 釣り針にかかるときも、戯れていて、くちばしが絡んでしまった、という感じの釣れ方が多い。 実際、なにを食べているのだろう?

ネットで調べてみて驚いた。 危険な魚だという。 高速で人に突進して、槍のように突き刺さる。 死亡例まであるという。 

こちらでは、そういう話は聞かない。 テアカパンにいるのは、幸いにも温厚な種類なのだろうか。 注意するに越したことはない。 潮廻りによっては、うじゃうじゃいるのだから。  

テアカパンでは誰も食べていないと思う。 漁師が、シイラ釣りの餌に使うのが、唯一の利用かもしれない。 

味は悪くは無い。 しかしながら、食べられるところは、尻尾がちょっこっとだけだ。 頭とくちばし、硬いあばら骨ばかりの腹、これは切り刻んでネコに進呈することになる。  

青磁のような、青味のある身は、サヨリのようで、鮮度がよければ、硬く締まっている。 

弾力のある刺身を、ぎゅうぎゅう噛みしめながら、あの妖しい緑の遊泳を思い出す。 南の海にふさわしい味に思えてくる。  

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